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■ニューデリー駅前に拡がるパハール・ガンジ地区のとある一角に露店を構える主人が今回の取材対象。
■元来中国・四川省に始まった喫茶の歴史は、その後世界中に伝播。現在各国で様々な抽出方法が取られているが、大まかに別けて三通りある。 1淹茶式…急須(ティー・ポット)の中に茶葉を投じ、熱湯を注いでエキスのにじみ出た茶液を飲む方法。元来英国貴族・上流階級に端を発し、ヴィクトリア朝後期に大衆にも普及した煎れかた。同国では『紅茶を最も美味しく入れるために守らなければならないルール』(ゴールデン・ルールズ)などと長く信じられていた。 2煮出し式…最もカジュアルかつ一般的な抽出方法。ストレート、ミルクティーなど応用も多彩。この抽出法と似て非なるものに煮込み式(stewing)がある。文字通りシチューを作るがごとき方法で、インドのチャイがこれにあたる。この方法が取られている国にはインドの他、パキスターン、アフリカ諸国などがあるが、地域・気候風土・水やミルクの供給状況・嗜好の差・採算性などによって様々で、定型は存在しない。 3濾過式…茶葉を茶漉しネット、逆三角形のネルの袋などで一定時間熱蒸らした茶液を飲む方法。ネルの袋(ティー・バック)は元来コーヒー液を得るために南インド人が用いていた方法を紅茶に応用したもの。共に充分なエキスが湯にしみ出す事はなく、単に茶色いお湯といっただけのものである。
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■向かって左側が粗目砂糖。右が茶葉。 茶葉はアッサム州産の等級の低いものを使用している。
■アッサムはインド全体の約半分の茶葉生産量を誇る大生産地で、中央のジョルハットには世界一と言われるトクライ茶業試験場がある。
■日本で販売されているアッサム茶は大半が1茶期のもので、渋味が弱くこくのある味、あっさりした香りで飲みやすいものである。インドで安く売られているものもこれである。 2茶期(セカンド・フラッシュ)は最高級品として高級ティバッグに適している。
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■チャイには生姜がよく合う。 これはチャイに入れるための生姜を潰して(注:すりオロシではありません)いる所。 通常、このような路上のチャイ屋にすりオロシ器などない。
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■↑で行うような『潰す』という調理法はカレーなど他のインド料理一般に於いても広く用いられる。 インドではそのため「コタニ」と呼ばれる専用の調理器具すら存在する。(アジアハンターではこちらも通販しています)
■マサラ潰し・普通サイズ■
□商品番号…SS-19a
□値段
1,300円
◇インドで使用されているマサラ潰し(『コタニ』)です。カルダモン、ターメリックなどを潰すのにお使い下さい。 (インドではスパイスを粉末にするには石臼で、潰すのには上記のマサラつぶしを用います)
◇本体直径
7cm
高さ 7cm 棒の長さ:15.5cm
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■簡易ガスコンロに空気圧を加え鍋に火をかける。
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■コンロ脇に見えるヤカンには常に熱湯が入っている。 この熱湯を鍋に注ぎこむ。その後、茶葉を入れる。
■このように客が来ると新規に茶葉を入れる場合もあるが、鍋の中には既にある程度の茶葉は入っていて、そのまま煮込んだ茶液に牛乳を加えて出す場合もある。 長時間茶葉を湯に浸しているとそれだけ渋味やエグ味が出るが、チャイの場合それが一つの持ち味でもありインド人には慣れ親しんだ味とも言え、また投入される多量の牛乳や砂糖、スパイスなどが緩和させるため、一度投入された茶葉は数分〜数時間、鍋の中でグツグツ煮込まれている。
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■茶葉がお湯に染み出し、沸騰すると大さじ3〜4杯の砂糖を加える。
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■お湯の量を微調整する。 この辺の手心の加え方が美味さを引き出すプロの技。 お湯が茶葉に完全になじんだあと、牛乳を加える。 この牛乳も冷たいものを注ぎ込むのではなく、予め熱したものを加える。冷たいものを注ぐと『味が壊れる』と主人は語っていた。 尚、分量としてはお湯3に対して牛乳1あたりである。 牛乳を注ぎ込んだら鍋にフタをして沸騰を待つ。
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■沸騰した液体がフタを持ち上げそうになった段階で先述の生姜すり潰しを鍋に投入。最後の最後になってから、生姜すり潰しを入れるようである。
そして、茶漉しで濾過。
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■これでチャイの完成。 やはり一口目が一番美味い。
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■朝方、上記のように逐一写真を撮っていると、主人がぶっきらぼうにのたまった。 『夜来な。チャイ・マサラ入りのヤツを飲ませてやるから』
←がチャイ・マサラである。 市販のものもあるがこれは主人が自らスパイスを調合して作ったもの。
■尚、マサラとは『混合』とでもいった意味で、混合されたスパイスの総称である。マサラというスパイスが存在する訳ではなく、家庭や業者、個々人やそれを投入する料理によってスパイスの配合は千差万別であるため定型は存在しない。
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■このチャイ屋のチャイ・マサラの内容… □クローブ □シナモン □カルダモン □月桂樹 □黒胡椒(カーリー・ミルチ/これは冬のみ使用。体が温まる) □粉末生姜(ジンジャー)
■上述の通り、マサラには定型が無いため、このチャイ・マサラの配合もたまたまこのチャイ屋でこうだっただけであり、その配合は千差万別である。この辺が、マサラがインドそのものに例えられる所以でもある。
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■チャイ・マサラの入れるタイミングも、上記の生姜すり潰しの時と同じく、沸騰後の最後の最後である。
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■彼の店は旅行者ガイドブックなどに記載されている『メイン・バザール』の一番奥の方にある。この辺では一番だと思うので、もしデリーを訪れた際は一度味わってみて下さい。
(04年2月27日加筆)
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